超高齢・人口減少という社会病理が、わが国を大きく揺るがせています。
 地域住民の健全かつ健康な生活の確保が困難となるような事態、また、完全治癒が見込めない、長期療養、あるいは多重罹患が当然といった慢性疾患罹患者の増大、個々人の暮らしの質の低下が予想されるなど、私たち「国民の健康な生活の確保」あるいは「地域の公衆衛生の向上・増進」に寄与する立場にあるプロフェッショナルにとっては相当の覚悟と自覚をもってパラダイムの根本的変化と日々の職務の在り方の変革に取り組まなければならない時代です。
 一方で、医薬分業元年(1974年)から44年の経過の中で、全国5万軒余を数える薬局数、医薬分業率70%超の達成など、数字上の成長を遂げてきた薬局の顕在的・潜在的な能力には期待が寄せられ、今後の質的飛躍が強く求められています。
 また、『薬学6年制教育』もすでに2巡目となり、大学と病院・薬局の協力体制の下で、「患者・生活者本位の視点」に立つことができ、「薬物療法における実践的能力」、「地域の保健・医療における実践的能力」を2つながらに備え、「チーム医療への参画」を原理上のアウトカムとすることができるような人材育成努力が図られています。
 このように10年以上前から、近未来の危機的状況に対応するための研究、指針整備、政策化などが進められてきたと考えられますが、現場の理解も対応も必ずしも万全ではなく、十分に社会的要請に応えることができていない現状があります。

多くの地域医療の現場にいる医療介護福祉関係者が日々ジレンマを抱えながら苦闘している現実に鑑みて、私たちは、標記研究会を立ち上げることを決意いたしました。

 地域の医療保健に関わる社会的資源として相当の潜在力を持つ薬局を、地域住民個々人の抱える生活上の障害を軽減し、住民の自助力の向上を図り、それをばねとして地域住民間の相互的な協力関係まで発展させ、このような力を地域力として一般化・標準化することのできる文字通りの健康サポート薬局として機能させ、薬剤師の任務を十全に果たし、他の医療介護福祉職のサポートまでを視野にいれて活躍できる薬剤師を育成し、多職種連携による地域の安心安全かつ健康なくらしに奉仕できる包括的ケア体系の実現のために、啓発広報活動、多職種による研修の実施と支援、現場における課題の発掘と研究並びに研究活動の支援を中心に、ボトムアップ型の活動を展開していこうと考えております。

「地域」を中心に展開される包括ケア体制は、地域ごとに異なる課題、ニーズを抱えることとなりますが、「衣医食住」のすべてにおいて地域の要請に応えることのできるベースとしての薬局、そして医療連携サポートベースとしての薬局、そして医療介護福祉職全体としての取組について、皆様とともに考え、実践できることを祈念してやみません。


一般社団法人 地域医療薬学研究会
代表理事 鈴木 順子
       設立発起人 一同